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尚志高校からのお知らせ

蜂友より

3月3日に発行された蜂友 第110号 が発行されました。
広報委員会委員長(2年普通科 佐藤 若奈さん)が担当した論説をご紹介します。




蜂友 第110号 論説



「和食」がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。能楽、歌舞伎、雅楽などに次いで22件目の登録だ。食に関する無形文化遺産としてはフランス料理、メキシコ料理などに次ぐ登録となる。ユネスコへの申請理由は「和食 日本人の伝統的な食文化」だという。これを機に改めて日本人の食文化について考えてみた。

 日本の国土は細長く、地域色ある特産物が数多い。特産物にあった調理法も多岐にわたり、和食の多様性を生み出している。四季折々の気候があり、料理の盛り付けにも自然の季節感が表現されている。動物性油脂の少ない和食は健康食として注目されることも多い。修学旅行で訪ねたアメリカのスーパーにも日本の豆腐や醤油が売られており、和食に対する関心の高さが窺えた。また、正月のおせち料理、桃の節句のちらし寿司、端午の節句の柏餅など行事に合わせて特別の料理を準備する食文化もある。このように和食の魅力はたくさんある。

 この和食の伝統が、家庭の食卓から姿を消しつつあるように感じる。米に代わってパン食を好む傾向、肉や乳製品を食べる機会の増加など日本人の食生活が欧米化している。専門家は和食の特徴であるはずの「一汁三菜」が既に過去の話になっていると主張している。好きな物だけでお腹をいっぱいにしたい、いろいろなメニューを並べるのが面倒だという理由が考えられるそうだ。冷凍技術の進化や物流の発展により、多くの食材が一年中手に入る環境が整い、日本料理で重んじられる季節感も感じられない。涼しい部屋で食べる真夏のおでん、こたつで食べる冬のアイスクリーム。器にも季節感はなくなり、一年中、お気に入りの器を使う。欲のままにおいしさを追求するあまり、味付けは分かりやすく濃くなり、味を足し算のように重ねている料理が増えている。

 和食のユネスコ無形文化遺産登録は私たちの食生活を見直す良い契機だと考える。食べるという行為は本来、命をつなぎ、健康で長生きするという目的があったはずだ。和食は命をつなぐことと味おいしさが両立するよう発展していった料理だ。飽食の時代と言われて久しい昨今、季節は関係なく、好きな物を好きなだけ食べられるようになった。さらには1970年以降から、ファーストフード、ファミリーレストラン、コンビニエンスストアなどの全国展開が始まり、食事をするのに困る場面は少ない。このような中で日本の食糧廃棄率はアメリカを上回っている。年間1800万トンもの食糧を廃棄している。これは3000万食に匹敵する。飢餓が原因で1日4~5万人の人が亡くなっている世界の現状を考えると胸が痛くなる数字だ。しかも、日本の食糧自給率は約40%と低く、食料を輸入しているにも関わらず、世界一の廃棄大国という皮肉を抱えている。

 大阪には始末の文化がある。始末とは始めと終わりを指す。物事の締めくくりをつけること、後片付けをすることという意味があり、食材を無駄にせず使い切る食文化や知恵にあふれているという。実に素晴らしい精神だと感じた。


 私たちは食事の後には「ごちそうさま」と言う。ごちそうさまはご馳走様と書く。「馳走」は、昔は客の食事を用意するために馬を走らせ、食材を集めたことを意味する。このため「馳走」という漢字が用いられ、走り回って用意するところからもてなしの意味が含まれるになった。このような理由から感謝の意味で御と様を付け、江戸時代後半から食後の挨拶となった。欲望のままに食事をするのではなく、季節を感じながら、命をいただくことに感謝をして食事をしたい。「いただきます」「ごちそうさま」の言葉ひとつをとっても日本人の食に対する精神性を感じることができる。ユネスコの無形文化遺産登録に恥じぬ食生活を心がけたい。

2014.3. 7 更新

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