「学び続ける力」と「コラボする力」
5月19日発行の「進路だより No.6」より記事を抜粋して紹介します
若者よ、君の20年後の飯の種は「今存在しない仕事だ」
NPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹
2011年8月のニューヨーク・タイムズ紙で米デューク大学の研究者であるキャシー・デビッドソンさんの研究が発表されました。そこには「米国で2011年度に入学した小学生の65%は、大学卒業時、今は存在していない職に就くだろう」とありました。
確かに、僕が小学生だったころにドコモショップの店員という仕事はなかったし、WEBアプリのデザイナーもいなければ、社会起業家なんて職業はもちろんありませんでした。つまり20年後は、多くの人々が、今我々が想像だにしない仕事で飯を食っている可能性が高い、ということです。そう考えると、今皆さんが「ここの会社に入ったら、親も喜んでくれる」とか「この業界であれば合コンでモテる」等と考える企業や業界が、20年後に存在しているかというと、はなはだ怪しいです。
現にたかだか10年ほど前、僕の学生時代に就職偏差値(学生の入社したい人気度・難易度)が高かったのは、リーマン・ブラザーズでしたが、多額の投資資金とともに消えてなくなりました。また10歳離れた姉の時代は銀行が花形だったそうですが、「いじめられても、辞めたら外で生きられないから、しがみつく」と半沢直樹が原作で自嘲的に語るように、とても厳しい状況になっています。
僕たちの生きる時代は、どうやら半端ないスピードで変化しているようです。では、そこで職業人として生きるには、どのような能力が必要なのか。僕は個別の技術やスキルセットの土台となる「メタ能力」だと思っています。この能力には、大切な3つの要素があります。
1つ目は「学び続ける力」です。世の中の変化に応じて、社会に出てからもさらに学び続ける。1つのスキルが陳腐化しても、次につなげていく。たとえば、経理のなかでも特に、非営利組織の経理をさらに学ぶ。そうすると、単なる経理業務とは異なる専門性を組み合わせることができ、希少性を高められます。あるいは翻訳。今はグーグル翻訳などがあり、単に「英語を日本語に置き換える」という力だけでは十分ではなくなりました。けれど「医療分野の英語に詳しい翻訳者」となると付加価値が高まります。学び続けて専門性を獲得し、専門性を組み合わせていくことが重要です。
2つ目は「コラボレーション・リテラシー」です。日本は中国や韓国のように安いものを大量生産しても価格競争には勝てません。付加価値を高めて商品を売ることが必要になってきます。そのためには異なる専門性の組み合わせが不可欠です。かつては同じセクションの人とだけ働くことが一般的でしたが、現在は、WEB製作一つとっても、フリーランスのデザイナー・インハウス(社内)のプログラマー・設計役のWEBマーケティングコンサルト、と異なる働き方をして、異なる技能を持っている人たちと、期間限定で働くのは当たり前。
3つ目は「問題を見つけて試行錯誤する力」です。仕事でやることは20年後、100年後も「問題発見」し「問題解決」をすることです。これは不変です。 現に、せっかく作った作物を、手で運ぶと効率が悪い、と紀元前5000年に誰かが「問題発見」し、箱に丸い輪っかを付けるとすんなり進むぞ、と「問題解決」して車輪ができたわけです。車輪に限らず、ほとんど全ての「ビジネス」に共通するのは、この構造。
「学び続ける力」「コラボレーション・リテラシー」「問題を見つけて試行錯誤する力」――この3つの能力を下支えするには、何よりも「内発性」と「自己と他人を肯定する力」が必要です。「やらされてやる」じゃなくて、「やりたいからやる」という、内から湧き出る力。これが内発性。そして「自分には価値がある」と信じられるからこそ、試行錯誤につきものの失敗を繰り返すことを、恐れない。小さな失敗くらいで、自分の価値は揺るがないから。そして「目の前の人には、可能性がある」という根拠なき他者信頼なくして、コラボレーションはできません。
2014.6. 6 更新
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